2024年秋までに従来の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」への一本化を進めている政府。
マイナポイントを配布したり、「マイナ保険証」を使わない人の医療費を引き上げてみたり・・・、様々な施策を講じているが、果たして本当にマイナ保険証を使用することで生活は便利になるのでしょうか?
マイナ保険証でどのくらいお得になるのかも知りたいな。
実際にクリニックで医療事務として働くわたしが現状をお伝えします。
マイナ保険証とは?
そもそも、マイナ保険証って?
マイナ保険証とは、「健康保険証」の機能を紐づけした、マイナンバーカードのことです。
これまで病院に行くとき、健康保険証を持って行っていたと思いますが、それをこれからはマイナンバーカードを持っていくだけで、健康保険証の情報を分かるようにしようということです。
マイナンバーカード持っていたらすぐ保険証として使えるの?
マイナンバーカードを健康保険証として使用するためには、「健康保険証利用申し込み」の手続きが必要です。手続きの方法は、
- スマホの「マイナポータルアプリ」からの申し込み
- パソコンで「マイナポータルサイト」からの申し込み
- セブン銀行ATMからの申し込み
- 医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーからの申し込み
この4つの方法からマイナンバーカードに健康保険証機能を紐づけすることができます。
ただし、4つ目の「医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーからの申し込み」ですが、わたしの勤めているクリニックで使用しているカードリーダーはまだまだ不具合が多く、顔認証機能が上手く使えないということが多々起こっていますので、他の医療機関でも同様のことが起こっているかもしれません。
病院でのマイナ保険証の使用方法
まず、どの医療機関・薬局でも使用できるわけではありません。
「マイナ受付」のステッカーやポスターが貼ってある医療機関・薬局でのみ使用が可能です。
使い方は、
- マイナンバーカードを用意する。
- 医療機関の窓口に置いてある「顔認証付きカードリーダー」に向きを揃えて奥までカードを差し込む。
- マイナンバーカードを作った時に設定した4桁の暗証番号か、もしくは顔認証で本人確認を行う。
- 薬剤情報や特定健診情報、限度額認定証情報などの閲覧を医療機関が行っていいかの同意確認に答える。
- 受付完了
使い方はそこまで難しくはありませんが、数カ月間の利用状況を見ていると、暗証番号を覚えていなかったり顔認証の読み取りが上手くいかなかったりして、従来の保険証で確認を取らせてもらうことも多々ありました。
また、機械操作が不慣れな患者さま・手足が不自由な患者さまなどに関しては、操作自体が難しく、スタッフが付きっきりで説明や介助にあたる場面もありました。
また、薬剤情報や特定健診情報の開示に同意していただけたとしても、閲覧するためには専用のPCが必要だったり端末からわざわざ印刷をかけたりしなければならず、実際はすべての患者さまの情報は閲覧できていないのが現状です。
マイナ保険証、結局便利なの?
医療費が安くなる
2023年4月より、マイナ保険証を使用しなかった場合、医療機関において算定できる加算が導入され、結果的に従来の保険証を使用するよりマイナ保険証を使用した方が安くなります。
では、どのくらい安くなるのか。
医療費の自己負担が3割の人の場合、ひと月に10円安くなります。
え・・・、たった10円しか変わらないの???
そうなんです。3割負担の方ですら10円しか変わらないので、1割や2割負担の方は従来の保険証を使用したとしても何も変わらない場合もあるのです。しかも、これまでは保険証を出すだけで済んでいたのに、マイナ保険証はいちいち機械に暗証番号を入れたりと操作が必要になり、面倒だと言われる患者さまも少なくありません。
医療機関としても、様々な機械を導入し、その使い方を覚え、機械の不具合の対応や患者さまの介助をしても、その差額は微々たるものなのです。
ただし、10円とは言え、安くなることに変わりはありません。
使用する労力と10円、どちらを取るか・・・あなた次第です。
カードをいろいろ持たなくていい
マイナンバーカードに保険証機能を紐づけることで、従来の保険証を持つ必要はなくなります。
・・・と言いたいところですが、現在はまだ、どちらも持つ必要があるでしょう。
というのも、医療機関によってはマイナ保険証に対応していないところもまだありますし、対応していたとしても機械の不具合によってマイナ保険証が読み取れない場合もあります。
政府としては一本化することのメリットのひとつとしてあげていますが、現場はまだまだそれに対応できていないのが現状です。
また、医療事務として働く立場から言わせてもらえるなら、これまで現物で確認していた保険証がなくなると、PC上でしか保険情報が確認できなくなり、万が一停電したりPCが立ち上がらない場合などはどうやって患者情報を確認すればいいのだろう・・・と思ったりもします。
トラブルが後を絶たない
2023年5月末に、医師や歯科医師で作られた団体「全国保険医団体連合会」がマイナ保険証の運用停止を訴えました。その理由は、全国の医療機関に対して行った調査によって、マイナ保険証のトラブル件数が1429件にも及んでいたことでした。内訳としては、「資格無効・該当なし」が67%と最多で、「他人の情報が紐づけられていた」が37件もあったという結果でした。
医療情報とはまた違う話になりますが、マイナンバーカードに本人ではない口座が登録されている件数が約13万件確認されたそうです(2023年6月7日時点)。
このように、紐づけされている情報が不確かなままでは、重大な医療事故も引き起こしかねません。
実際、勤めているクリニックで数カ月顔認証付きカードリーダーを使用していますが、まず、機械が立ち上がらないというそもそもの問題も起きています。これは使用しているカードリーダーの問題でもあるでしょうが、毎日のように不具合が起き、その度に再起動をして・・・という手間がかかっています。
その割には、まだマイナ保険証の普及率が低いせいか、1日50人ほど受診する患者さまのうち、マイナ保険証を使用するのは多くて3人ほどです。1日誰も使用しない、ということもよくあります。
手間がかかっている割には便利さや有効性を実感できないので、スタッフとしても積極的にマイナ保険証の使用を患者さまに促してはいません。
全国保険医団体連合会からも、「医療情報において、誤登録は1件たりともあってはならない。医療崩壊が目に見えていますので、なんとしてでも保険証をとにかく残してください。」と訴えています。
まとめ
まとめると、「マイナ保険証はまだ便利だとは言えない」ということです。
これから、今問題としてあがっている事例をひとつずつ解決していった先に、マイナ保険証を使うのが当たり前の世の中になるのではないかなと思いますが、今はまだその段階にありません。
まだまだ始まったばかりの制度ですから、しょうがないですよね。
使用しているわたしたちは表示される情報だけを鵜呑みにするのではなく、患者さま自身にその都度確認を取りながら、正しい情報を持って医療を提供していきたいものです。
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