✾現場からみた、医療事務のウソとホント✾

働き方

女性が長く働きやすい職業として「医療事務」ってよく聞くけど、

実際のところ、どうなのかな?

今回の記事では、そんな読者の疑問に、10年以上現場で働いている、現役医療事務員が忖度なしでお答えしたいと思います。

そもそも、「医療事務」ってどんなお仕事?

どんな方でも一度は病院にかかったことがあると思いますが、その時受付にいるのが医療事務のスタッフです。お仕事の内容としては、

  • 患者さまの受付・電話応対
  • カルテ作成
  • 診療報酬計算
  • 会計
  • レセプト請求

この他にも、医師の診断書記入の補助や緊急時の連絡対応、未収金請求など、業務は多岐にわたります。

この中でも、もっとも特徴的な業務が「診療報酬計算」「レセプト請求」です。
医師や看護師、セラピストが行った診療行為を国の規定にのっとり、正しく計算し患者さまや支払基金に請求を行うことで病院としての収入が得られるので、その業務は病院経営を行っていくうえでも極めて重要な業務のひとつです。

では、この医療事務の世間のイメージが実際と合っているのか、ひとつひとつ見ていきたいと思います。

「医療事務」の世間のイメージのウソとホント

・女性が多く、子育てしながらでも働きやすい?

医療事務員の9割は女性です。しかも、20代~30代といった、いわゆる「子育て世代」の方が多く働いています。つまり、「一緒に働く医療事務員はほとんど同じような境遇である」ということです。

それは、裏を返せば、出産のタイミングや子どもの運動会やPTAなどの行事も時期的に被ってしまい、結果的に休みが取れない、ということです。

もちろん、同じ境遇がゆえに、お互い理解し合え助け合える職場もありますが、人間関係が悪い職場になると、「あの人ばかり優遇されて不公平」や「こんな人が足りない時期に妊娠?」といった、心無い言葉が聞こえてくることもあります。

国は育児休業の取得に積極的な姿勢を見せていますが、実際は育児休業の代わりのスタッフを入れる職場は少なく、残されたスタッフが必死に働くしかない、という状況はどの業界でもあることなのかもしれません。
ましてや、医療事務員は最低人員の規定がありませんので(医師や看護師は病院運営上、「〇〇人以上常勤」という規定があります)、真っ先に人員を削減される部署でもあります。

限られた人員で同じような境遇の人が集まれば、休日の争奪戦が始まるわけで、これは果たして
「子育てしやすい職種」と言えるのかは疑問です。
実際、私の同僚は、子どもの入院に付き添うため休職を申し出たところ、取得できる介護休業の日にちをオーバーしていたため、休職は認められず、解雇されました。

「医療事務=子育てしやすい」というわけではなく、各職場の就業規則や人間関係の雰囲気をきちんと確認してから就職することをお勧めます。

事務職だから、基本座ってお仕事?

どうしても、「医療事務」という名前の印象から座って仕事をするイメージがあるようですが、実際の仕事内容としては、ほぼ座ることはありません

医療事務の仕事は、いわば「接客業」です。

病院の受付で患者さまと一番に接するのが「医療事務員」です。
その時、患者さまは黙って通り過ぎるわけではありません。
「今日は膝の調子が悪いの・・・」
「保険証忘れちゃった」
「熱があってしんどいです・・」
患者さまはまず受付のスタッフ、つまり医療事務員に今日来院した理由を話します。その状況を瞬時に判断して医師や看護師にすぐ知らせるべきか、というところまで考えを巡らせなければいけません。

自分の判断が命に関わることもありますし、みんな「早く診察を終えて帰りたい」と思っているわけですから、ゆっくり座って自分のペースで仕事をしていては即クレームにつながります。

医療事務の仕事は世間が思っているより、スピード性が求められる仕事です。

パート?派遣?働き方が自由に選べる?

これはホントです。
「事務職」というカテゴリーでパートや派遣社員の求人を検索すると、たくさんの「医療事務」の仕事がヒットします。
転勤が多いパートナーの場合でも、全国に病院はありますし、ある程度経験を積めば就職先に困るということはないでしょう。

ただ一口に「医療事務」といっても、病院の科目(内科・外科・消化器科など)によって医療行為が違いますので診療報酬の計算内容は変わりますし、電子カルテなのか紙カルテなのかによっても大きく業務内容が異なります。もちろん病院によって業務の流れも違いますし、診療報酬は2年に1回大きい改定があり、その都度新しい情報を勉強する必要があります。

たとえ医療事務の経験があっても数年現場から離れただけで、ほぼ一から学ぶ必要があることは覚悟しておいた方がよいでしょう。

お給料は安い?

これは見方によると思いますが、現場で働くものとしては安いのでは・・・と感じています。

みなさんは、医療事務員の必須アイテムである「解釈本」を見たことがあるでしょうか?社会保険研究所というところが発行している、「点数表の解釈」という本があります。医療事務員は医師や看護師が行った診療行為がどの点数に当てはまるのか計算して、それを患者さまに支払ってもらっているのですが、その「行った診療行為の点数」が載っているのが「点数表の解釈」、通称「解釈本」です。

この「解釈本」、なんと約2000ページもあります。その中から、難しい医療用語と難解な算定要件を読み解かなければなりません。電子カルテも普及していますが、大きくない病院では紙カルテを使用しているところも多くあり、レセコンといわれる、診療報酬を計算するソフトを駆使しても、算定要件を正しく理解していなければソフトに入力することもできません。

医療事務員は、そんな専門的知識と臨機応変に対応できるスキルが必要であるにも関わらず、お給料は正社員の初任給で約13万~15万円ほどです。年収はボーナスを合わせても、約300万円に満たない計算になります。

また、お給料だけでなく、病院内での立場も、国家資格を持つ医師や看護師に比べて低く扱われることは否めません。「いくらでも代わりはいる」と言われ、業務に対する発言力もほぼありません。

だからこそ誰よりも責任感を持って業務にあたり、患者さまとのコミュニケーションも大事にしながら、困っている人の役に立てる医療事務員であろうと、日々努力していける精神力が必要な仕事です。

さいごに

医療事務ってなんかすごく大変そう。。。

そう思われた読者の方もいるかもしれません。

私自身、学生のころ、医療事務ってコツコツ作業のできる自分には向いてそうと思って目指しましたが、実際は毎日が臨機応変さ・瞬発力の必要な仕事で、正直戸惑いました。

しかし、こうして現代は、さまざまな媒体を通じて、実際に働く人の声が届けられる場所が増え、より具体的に仕事内容を理解したうえで、就活や転職に役立てることができます。

みなさんにもぜひ実際の声をたくさん聴き、「想像と違った!」ということがないような就活を行っていただきたいと思います。

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